日々進化していく粗大ゴミ 引き取り

アジア人花嫁との結婚費用は、斡旋期間や仲介業者によって大きく変わる。
自治体が斡旋する場合は、二〇〇万円前後が普通である。
私企業による場合、私の聞き取りの範囲では、二六五万円から二〇〇〇万円の幅である。
しかし、その内訳や根拠は、はっきりしない。
タイに行ったとき、『バンコクポスト』紙の記者から、日系企業がタイ人花嫁を「卸し売り」しているときいた。
在タイ日本人の歓楽街といわれるバンコクのタニヤ通りの近くにある事務所を訪問すると、「日本の結婚斡旋業者を相手に取引しているけれど、バンコクで小売りすることもできます。
その場合、日本での価格よりは1〇〇万円安くできますよ」という話であった。
これだけ大きな金額をまとめて支払っていながら、領収書を受け取っている人がほとんどいないのも不思議である。
花嫁を純粋な『商品』として扱うことへのためらいであろうか。
結納金を納める男性が領収書をもらう習慣がないためであろうか。
日本人同士の結婚費用は、平均六五〇万円といわれる。
このうち約六割を男性が、約四割を女性が分担するケースが多い。
国際結婚を斡旋する業者によれば、この平均的な男性の負担金額(約四〇〇万円)がアジア人花嫁の「市場価格」を規定する疸要な要因である。
過疎地における国際結婚にとって、当面もっとも欠けているのが公権力や私企業の立場を離れて、同じアジア人という立場からの、人間的なつながりであろう。
日本人を配偶者に持つフィリピン女性やスリランカ女性のあいだで、自分の知人や友人を近所の日本人男性に紹介する先輩も増えてきた。
利潤や行政の目的ではなく、同じ仲間として助けあおうとする試みである。
このような当事者による新しい事業に、地域のNGO(非政府組織)が協力できれば、公権力や私企業よりも人間的な国際結婚を進めることができるのではないか。
公私の両部門以外に、このような「共的部門の果たすべき役割」が大きいと思われるのである。
農業後継者対策のアジア人花嫁導入でもなければ、利潤目的の花嫁「輸入」でもなく、ともに過疎地で生きる仲間同士の相互扶助である。
その場かぎりの斡旋ではなく、生涯にわたって助けあおうとする人たちによる国際結婚には拍手を送りたい。
長野県のスリランカ人花嫁アジア人花嫁の『輸入』が組織的におこなわれるようになったのは、ごく近年の現象である。
その実数を明らかにする公式統計は、まだ発表されていない。
日本の植民地時代から通婚の多かった韓国と台湾を除くと、フィリピンと中国からの花嫁が圧倒的な数を占めるであろう。
後述のプリヤーニ事件の背景を知るために、ここでは長野県におけるスリランカ人花嫁について、やや詳しくみておこう。
フィリピン人花嫁の比重が高いなかで、長野県とその周辺地区に「輸入」される花嫁は、相対的にスリランカ人が多い。
主要都市のMで働いていたフービソ人女性がエイズに感染していたことが報道されて以来、他地域からの花嫁を望む男性が多くなったともいわれる。
たまたま、日本人男性の需要とスリランカ人女性の供給が一致しただけだ、という人もいる。
しかし、なぜ日本人の配偶者探しがスリランカに向かうのかは不可解である。
やはり、供給側の状況からみる必要があろう。
スリランカでは、一九七〇年代の後半から西アジアの産油国へ向かう出稼ぎ労働者が急増した。
これは、多かれ少なかれ、日本以外のアジア非産油国に共通する現象である。
このような状況のもとでスリランカに固有の特徴は、女性の出稼ぎ労働者の占める比率が著しく高いことである。
とくに、非熟練労働部門に女性が集中している。
この部門で働くために渡航したスリランカ女性の数が一万人をこえた一九七九年に、七九・一%(女一万一三二一名、男三一八〇名)、八一年に七六・八%(女二万四五三七名、男七三九九名)という統計が公表されている。
その後も女性の海外出稼ぎは増えつづけ、九三年には六万人の女性労働者が西アジアへ向かって出国した。
そのほとんどかシンハラ人であり、家族を残して単身で赴いている。
七七年以降とられてきた開放経済政策の、ひとつの帰結でもある。
ジンクフ民族の人口規模は、約一一〇〇万人である。
日本の人口規模に即して比較すると、六〇万人以上の女性が単身でアラブ諸国の家事労働者として出かけている事態に匹敵する。
コロンボでは、女性の非熟練労働力を海外市場に斡旋する組織が急成長した。
しかし、一九八五年後半から石油価格の低落傾向が始まると、西アジアの労働市場も停滞し、女性を送りだしていた仲介業者も方向転換を図りはじめた。
また、国内の民族対立が激化し、暴動や武力抗争の形態を取るようになってから、観光旅行客の来島も急減し、ホテルなどの雇用も少なくなった。
そこで、北ヨーフでハ諸国における出生率の低下から派生した、養子のための乳幼児需要に対応して、観光客の来なくなったホテルを「輸出用ベビー製造工場」に転換する事業が始められた。
スリランカ人女性とヨーロッパ人男性とのあいだで組織的に混血児を産む事業である。
しかし、女性団体からの抗議によって、政府はこの非人間的な事業の禁止を閣議で決定した。
このような社会経済的な背景のもとで増加したのがヨーロッパと日本への花嫁『輸出』である。
スリランカの新聞報道によれば、ヨーロッパの花嫁『輸入市場』では、二〇歳から二五歳の女性の市場価格が高く、日本では二〇歳未満の女性がもとめられる。
仲介業者は、ヨーロッパ向けの花嫁と日本人向けの花嫁を、別々に新聞広告で募集していた。
しかし、日本の新聞社と違って、スリランカの新聞はそのような広告の掲載を拒絶するようになった。
やむなく、日本への輸出エージェントは、低年齢という点に着目して、孤児院や学校から募集している。
日本側の輸入業者は偽装結婚事件として摘発されたような事例を除けば、日本人同士の結婚相談事業を営んでいた人が多い。
たまたま観光旅行でスリランカを訪ねだり、宝石を輸入した機会に、若い女性を組織的に日本の農村へ送り出そうとしているエージェントにめぐりあい、国際結婚の仲介を始めたという経緯もある。
出稼ぎ労働力のリクルート制度か確立しているため、スリランカでは若い女性を募集するコストがきわめて低い。
一九八九年におこなった私のインタビューによると、一人あたり二万七〇〇〇ルピー(約一一万円)もあれば十分といわれる。
それなら高収益を見込めると、多くの結婚相談業者の関心を集めはじめたのである。
もともと、スリランカの社会や民族に何の興味もない人たちだったので、さまざまな混乱がみられる。
同じ仏教徒だから日本人の心情に近いという宣伝文句にもかかわらず、来日した女性の相当数はカトリック教徒であったりする。
シンハラ文化や上座部仏教について学ばずに、一日も早く日本の農村文化に同化させようという考えだけが優越している。
「輸出」するスリランカの業者、「輸入」する日本の業者との間で発生しているトラブルも、主として金銭上の利害対立であり、未成年の女性の人権への配慮とは無縁である。
長野県では、青木村のような自治体が、民間業者の「輸入」事業を側面から支援している。

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